評議員・奥島考康のご挨拶

人材教育「教育立国」こそが日本の生き残る道!

日本は、古来、朝鮮半島を経由して、インドからは仏教、中国から儒教などの思想、漢字、建築などの文化を輸入し、平安時代には、源氏物語や枕草子に代表されるひらがなやカタカナなどの文学、文化を開花させてきました。そして、江戸時代には、朱子学、陽明学など独自の東洋思想を発展させてきました。また、寺子屋が盛んになるなど、庶民レベルでも「人材育成」が行われてきました。こうした、「人材育成」があったからこそ、明治維新、第二次世界大戦後も目覚ましい経済発展を遂げることができたのです。

現在、私は、早稲田大学総長を退任後、日本高等学校野球連盟会長、財団法人ボーイスカウト日本連盟理事長を務めておりますが、これは、未来の日本を担っていく若者たちの人材育成が必要だと感じており、日本は「教育立国」を目指すべきだと強く思っているからです。真の教育は、相撲の世界で言うならば、「心技体」、すなわち、「心」は、「心の教育」、「技」は、「知識・知恵」、「体」は、「健康な体」づくりであります。
私は、「社団法人日本再生推進機構」の活動を通して、真の「教育立国」を目指した「人材育成」を進めてまいりたいと思います。

ひとづくりは、まちづくり・国づくりへ通ず『 百年樹人の教訓 』

日本は、90年代のバブル崩壊以降、失われた20年と言われて久しく、「亡国の兆し」も色濃く見られ、国民は希望を失っています。第二次大戦の敗戦時にも比すべき国家の危機といっても過言ではない状況です。この苦境を脱するためには、日本の未来であり、希望である青少年をどう育成するか、にかかっています。

そこで思い出されるのは、春秋時代の斉の名宰相・管仲の「百年樹人」の教えです。「一樹一穫は穀なり、一樹十穫は木なり、一樹百穫は人なり。」というこの教えは、いうまでもなく、「ひとづくり」の大切さを諭したものです。

私は、現在、ボーイスカウト日本連盟理事長を務めていますが、この団体の初代総長は「日本の都市計画の父」といわれた後藤新平です。彼は、仙台藩水沢が生んだ英傑で、幕末期、シーボルトに師事した蘭学者、高野長英の一族であったこともあって、医学を志し、医者となりますが、一介の医師で収まるには大きすぎた彼の器量を時代は見逃すことなく、「社会の医師」として「国づくり」に参画することを求めたのでした。

政治家として、彼の打ち出す構想は、口さがない人に「大風呂敷」といわれるほど雄大なものでしたが、それは彼が常に日本の未来を見据えていたがためのものでした。「日本の未来の設計者」としての彼は、「公共=国家」の基礎を「自治=地域」に置いていました。ボーイスカウト運動を通して地域の担い手を育成することは、まさに彼の考える「国づくり」のために生涯を賭けるべき使命だと感じ、そこに日本の未来を担う確かな希望を見出したのではないでしょうか。

私は宿縁ともいうべき、運命の不思議を感じています。「ひとづくり」に生涯を捧げてまいりました私と、日本の再生を行わんとする団体との接点。それは、先人の例に倣うまでもなく、「国づくり」は「まちづくり」にはじまり、「まちづくり」は「ひとづくり」にはじまる、という真理にあるのです。「大風呂敷」を広げるわけではありませんが、日本の再生の基盤を「ひとづくり」におき、日本中で様々なプロジェクトを進めていく私たちに、ぜひご期待ください。

評議員奥島孝康

profile
早稲田大学名誉顧問 法学博士。早稲田大学第14代総長。公益財団法人日本高等学校野球連盟会長。公益財団法人ボーイスカウト日本連盟理事長。元埼玉県公安委員会委員長。